やってみたい滑落停止|雪山講習の目的はそれじゃない

雪山講習と滑落停止

冬場になるとあちらこちらで雪山の講習会が開かれます。そして、必ず目にする滑落停止訓練。参加者である雪山初心者たちが目指す、雪山講習会というのは滑落停止訓練のことだったの!?


雪山をやるためには滑落停止訓練が主要科目だという妄想

たぶん雪山やっている方には誰にでもあると思います。
なんとなく、アイゼンとピッケルを買ったら、「やらなくちゃ!」と思ってしまう滑落停止訓練。
雪山講習会などでもよく滑落停止をやっているのを目にしますが、参加者もこれをやれば「満足」することでしょう(笑
(私もはじめた頃はそういう思いがありましたから)
しかしそれは、
蜂が怖くてポイズンリムーバーを買ってしまったり、クマが怖くて熊スプレーを買ってしまうのと同じです。
たいてい、そいういアイテムを買った時点で満足しているわけです。
蜂の習性を調べるほうがよっぽど対策はとれます。
クマの行動本能を学ぶことのほうがよっぽど賢明のようにも思えます。
それと同じで、滑落停止訓練よりも、まず、転んではならない重要性を知って、転ばない歩き・行動を身につけるほうがずっと大事だと思います。

 

何も滑落停止を否定しているわけではないんですけど、
先生(先輩)が手本を見せて、滑り台のようになった滑走路から、正面むいて滑って、止める。
まぁ、役に立たない、とは言いませんが…

本当に滑落停止を学びたいのなら、
転んだシチュエーションでやってみる、とか
荷物を担いでやってみる、とか
頂上アタックして、下山途中に疲労したときにやってみる、とか

一部、本格的にやっている組織もありますが、一般募集向けには、
なかなかそうはいきません。
あくまでも練習のときは、安全で、やりやすいということも条件にあるからです。

 

雪山講習と滑落停止

雪山の歩きの重要性

一方、転ばないための歩行のほうは、もっと大事なんじゃないでしょうか?
ヘトヘトになったときの、下山で転ばないためのスキル。
だいたいヘトヘトになるような登山を雪山ですべきでないし、毎回そうなっていたら、いつか滑落しそうです。
雪山訓練の最たる点は、歩きの基本の確認と思っています。そこで覚えるものではなくて、以後、雪山の実践で、それを意識してフィードバック&自分のものにしていかなくてはなりません。そのための、歩き方に対する意識のフォーカスを拡大する場なのです。

 

こんなことを書いておきながら、私も募集する雪山講習では、滑落停止をやります。
でも、参加される方は、ほとんどが、初アイゼン&ピッケルという方や、今年から始めたという方ばかりです。
内心では、その時点では、滑落停止訓練よりも、もっと歩き方を意識して欲しいという思いでやっています。
つまり、訓練をやったその後が大事で、いろんな雪や気象状況、地形やシチュエーションに対しての歩きをマスターしてもらいたいと思っています。