クライミングのリードビレイ|安全な確保のために知っておきたい話

クライミングのビレイのテクニックと方法

クライミングのビレー確保というものは簡単でしょうか?
私は、20年前にクライミングを始めましたが、やればやるほど難しいと感じています。そして、クライミングをやる上で、とても重要なスキルであるとも考えます。
私なりにクライミングビレーについての考察をまとめてみたいと思います。


基本ビレイの確認

ここでは初心者向けビレイの方法は割愛しますが、基本確認です。

一連のビレイ動作とロープの持ち方
ビレイ器具と操作法
ビレイ用の革製グローブの利用
クライマーとの体重差の認識
ロープ特性と支点強度などの考察

以上のことを踏まえたうえで下記記述します。
リード:ロープを自らが支点に掛けながら登るクライミングの基本スタイル
ビレイ:登る人をロープで確保すること

 

単純だからこそ気をつけたいクライミングのビレイ

リードクライマーの安全と負荷軽減のバランス

ビレーヤーに果たされる責任とは何でしょうか?
それは、クライマーの安全を守ることはもちろんですが、負担無く登らせてあげること(エスコート)も重要です。
安全を気にしすぎて、ロープがビンビンに張っていたら、登り手はクライミングに集中できません。
かといって、ロープユルユル(クライミングジムでは多く見受けられますが)にしていては、フォールしたときに危険が高まります。
リードビレイには、クライマーが安全に、かつクライミングに集中できるようにロープを操作することが要求されるのです。
クライマーから、ロープください!とか、ゆるめてー!もっと張って!とかいちいち指示されているようでは、安心して登らせてもらえるビレイヤーとして認められていないってことでしょう。

 

意外と多いクライマーのグランドフォール経験

クライミングのグランドフォール
かくいう私もグランドフォールを経験したことがあります(リードではありませんでしたが・・・)
そして、私の周りのクライマーでも、1-2クリップ程度からのグランドフォールを経験した事のある人がけっこういました。中には、腰の骨を折るような大怪我の方もいました。
統計上はでていませんが、グランドしてラッキーなことに助かった、というようなケースは多いのではないかと思っています。
※グランドフォール=地面にダイレクトに落ちること

 

リードクライミングのビレイヤーは信頼のある人を選ぶ

ビレイパートナーがいればベストですが、なかなか毎回同じパートナーというわけにはいかないこともあるでしょう。
クライミングジムなどで、仲間を作っていくというのがよいのですが、初心者を連れて行くというケースも十分にあるでしょう。
そのとき、ビレイヤーが初心者だけの場合は、本気クライミングはやってはなりません。
初心者の方も、その相手が安全面において注意を払っている人なのかを確認できたほうがいいでしょう。

 

登りはじめのあいさつと安全確認を呼称してますか?

8の字結びよし! ハーネスベルトよし! 確保器・カラビナセットよし!
など、登る人とビレイヤーとお互いに、確認しあってください。
言葉でしっかり呼称してください。
馴れ合った人同士では、はずかしいっていう気持ちもあるのか、
「登ります」「お願いします」すら言わないような人もいます。
中には、おしゃべりを続けながら、登る&ビレイするという人も見ます。
親しき仲にも礼儀あり。
命を預ける・預かるという意識を持ちましょう。

2クリップ目までにビレイヤーがきをつけること

クライミングのビレイのテクニックと方法
2クリップ(あるいは3クリップ)目までは、落ちるとグランドフォールする可能性が大きいセクターです。
ビレイとしては、もっとも難しく、集中したい部分でもあります。
ビレイヤーの位置は、クライマーが落ちてきても当たらないような、真下をちょっと避けた(振り子でケリが来ない)場所で確保します。つねにクライマーが落ちたときの状況を意識して立ち位置を決めてください。当然そんな都合のいい場所だけではありません。そんなときでも、何があってもクライマーを守らなければなりません。テンションがかかったら、当然引っ張られますので、狭い岩場の上のビレイなどは、そのことも考慮し、場合によっては、引っ張られないようにセルフビレーを反対側にとっておくことも必要です。
よく、登り出しで、しゃがんでビレイしている人をみかけますが、座ると、とっさの動作で体でロープを引けないのと、ロープを張る動作もうまくできません。落ちた場合はグランドを免れるためには、ビレイヤーが素早くロープを張る必要があるのに、座っていてはどうにもできないのです。これは、単に、クリップするときにロープの繰り出しが遅くなるので、繰り出しと同時に立ち上がって負荷を抑えようという配慮と、自分がクライマーに当たらないようにすることだと思いますが、状況によりすばやくロープを張れるほうが好ましいこともあると思います。
もちろん、クリップ前には立ってスポットです。
大事なのは、想定して動けることです。ルートと足場とクリップ位置などを考慮して、どこでどういうビレイをしたら最適かを判断出来るようになることです。
クライミングのビレイのテクニックと方法(2クリップ目まで

ダイナミックビレイとスタティックビレイ

ダイナミックビレイとは何でしょうか?
これは、クライマーが落ちたときに、クライマー・ロープ・支点に強烈なテンション(負荷)をかけないように、ロープを流したり時にはビレイヤーが飛んだりしてテンションがジワリとかかるようにビレイをおこなうことです。
これによって、クライマーは岩に激突しないですむどころか、腰などにかかる負荷を減らし、さらに、ルートの支点の強度を守り、ロープの寿命も延ばせます。たとえば、最終クリップ上1mからフォールしたとすると、ダイナミックビレイで制動をかけると、クリップ下4-6mくらいは流れるはずです。
一見、クライマーはたくさん落ちる?ので、怖いように思いますが、実はこのほうが安全です。
一方、スタティックビレイの場合はどうでしょうか?
まったくロープを流さなかった場合は(実際はロープのゆるみと、ロープ自体に伸びがあります)、支点やロープに、いっきに衝撃がかかってしまい、破損の恐れもあります。また、落ちたとき振り子のようになって、クライマーが壁に強く激突するかもしれません。
なので、基本はダイナミックビレイなのですが、上記の2クリップ目までのグランドフォールの可能性がある場面では、そうもいってられませんので、スタティックビレイを採用します。そのへんの塩梅は、やはり経験がもとになるでしょう。
こちらはクライマーが落ちるときの動画ですが、ダイナミックビレーされているのがわかります。

 

オーバーハングでのビレイ確保

オーバーハングでは、ちょっとビレイも慣れが必要です。
多くのパターンとして、ハング下にクリップポイント、そして、ハングを超えたところにクリップポイントがあるものです。
ハング下のクリップポイントで落ちた場合は、普通にダイナミックビレイでOKですが、あまりロープを流しすぎるとクライマーが宙吊りになって元にもどれなくなってしまう可能性もあります。支点の強度もありますので、思い切ってかなり下まで流して、クリップ側のロープにつかまるというのも手です。
クライミングのビレイのテクニックと方法(ハングの場合)
そして、ハングを越えた所でクリップをした場合。ここが要注意ですが、ハングを超えて落ちた場合は、フォールしたときに、クライマーの足が壁につけば問題ないのですが、足がハングの下に来るようであれば、当然、上半身(ヘタをすると頭)が壁に激突してしまう可能性が大です。なので、落ちたらロープをしっかりと流してあげましょう。宙吊りになるまで。この場合の宙吊りはしかたありません。

 

ビレイヤーがクライマーのパフォーマンスや上達を低下させないこと

クライミングのビレイはお互いの信頼のもとに行う
ビレイはクライマーとなる相手を思いやってないと、なかなか上達しません。
相手がどれだけスムーズに行動できて、気持ちよくクライミングしてもらえるか。
また、この人のビレイなら安心して登れる、って言ってもらえるようになればビレイをしていても気持ちが良いでしょう?
ビレイはクライミングにとっては、基礎であり基盤なのです。
しっかりとビレイしてあげる
しっかりとビレイしてもらう
これがクライミングの必須のスキルであると思います。