レインウェアを買う前に|登山用の雨具の選び方

登山用のレインウェア、どんなものが良いのでしょうか?
様々なブランドやメーカーからでている雨具ですが、最近は機能的なだけではなく、おしゃれなものが多くなってきています。
選択を間違えないように選び方のポイントをご紹介します。

素材と機能を知る

まずは、登山用、アウトドア用のレインウェアの素材ですが、基本的にナイロンです。
このナイロン自体には防水性はありませんので、防水素材となる薄いものを張り合わせてできています。
外側ナイロン 中に防水素材 内側にナイロンやメッシュ、あるいはむき出し

 

これにより素材が2層(2.5層)構造とか3層構造とかいわれています。

 

防水素材のゴアテックス

ゴアテックスというラベル(ロゴマーク)があるのは、防水素材が挟み込んである証拠です。厳密には防水透湿素材です。
素材にはミクロレベルで小さな穴が空いていて、(液体)の分子より小さく、気体(蒸気)の分子より大きいのです。
これによって、雨はぬれなくても透湿性があるというのが今のレインウェアの基本です。

 

防水素材にもレベルがある

さて、この防水素材ですが、同じゴアテックスでも種類があります。
あるいは、ゴアテックス以外にも、H2NO,ドライQ、ハイベント、あるいは各メーカー独自開発の素材などです。
それにより、強度や蒸気の抜ける量、お値段、などが違います。
たとえばモンベルのレインウェアでブリーズドライテックというのがあります。
これはモンベルの独自開発した防水素材ですが、3層ですが安価です。
透湿性はそこそこあるようですが、その他の機能は???です。
なぜならば、モンベルには大本命ともいえる、ストームクルーザーというゴアテックスの雨具があるからです。
こちらは3層のゴアテックス素材を採用した歴史のある雨具ですので、好き嫌いはともかく、モノはすばらしく良いと思います。

ゴアテックスを超える素材の誕生

ここ最近、ゴアテックスの黄金伝説にも隙間風が吹いてきました。
というのも、新しい発想の素材がつぎつぎと開発されているからです。
たとえば、イーベント(EVENT)は素材のメンブレンに蒸気を吸収させて発散させるという、これまでとは違ったメカニズムで透湿性の高い素材となっています。ただ、この素材を使用したブランドの数が少なくて、知名度が致命的に低いです。
さらに、マウンテンハードウェアの独自開発したドライQ(DRYQ)は、透湿性がゴアテックスよりはるかに高く、マウンテンハードウェアの雨具は、ドライQにエバップという素材を張り合わせたドライQエバップを採用していますが、この吸汗速乾力はかなりのものがあるようで、私も目をつけています。(使ったらレビューしますね)

 

2層と3層はどちらがよいのか

防水素材には基本的に2層(メッシュなどの2.5層)と3層(サンドイッチ構造)があります。どちらがよいかといえば、3層ですが、素材やデザインにもよります。
2層は加工費用などから値段が安いのですが、裏側がメッシュだったりして余分な構造になりがちです。2.5層とよばれるナイロンと裏地を兼ねた防水素材で風合いがよく、軽量化に成功しているジャケットもたくさんあります。

 

比較的安い独自開発のメンブレン

たとえは、ノースフェイスのハイベント2.5層を採用したトライアンフレインジャケットは、裏地に凹凸を出し肌触りをベタつかせずに重さ160gという軽さです。耐久は不明ですが、透湿はゴアには及びません。
国産ブランドですとミズノからベルグテックという独自素材をつかったレインスーツがでています。
このベルグテックは耐水圧30000mm(傘の60倍)という驚異的防水性に加え、透湿性は約16000/m2/24hというレベルを実現しています。

ノース・フェイス トライアンフレインジャケット(レディース)

 

強度に強い雨具

軽さや通気性にやや反比例しますが、強度もレインウェアを選ぶひとつのポイントです。わずか1シーズンでダメにしてしまってはもったいないでしょう。
とくに初級者にはすこし丈夫なレインウェアをおすすめします。
そういう意味でも3層なのですが。

防水はあたりまえ、問題は湿気の発散とムレ

いづれにせよ、以前は通気性がイマイチでしたが、最近の防水シェルはなかなかよく蒸気が抜けるようです。
ゴアテックスの場合、アクティブシェルという素材は、透湿性が通常のゴアテックスよりも良いということで、各メーカーともハイエンドモデルで使用しています。
なので、アクティブシェルを採用している雨具は、トップアスリート向けや激しい動きに対応したモデルが多いということです。
ようするに汗のヌケが非常に重要だということですね。
先にもとりあげましたドライQという素材があります。2011年に開発されたドライQは、非常にすぐれた通気性を発揮します。通常、体内の温度が上がらないと、水分(汗)が生地から放出されないのですが(透質性)、ドライQはこれに通気性を加えました。
けっこう衝撃的素材としていまも先行しているハイテク素材です。

ミズノ ベルグテックEX/ストームセイバーIVレインスーツ

 

素材がよいからレインウェアが良いとはかぎらない

確かに高い防水性・透湿性のメンブレンを採用しているからといって、そのメンブレンを最大限に発揮したようなナイロン生地やデザイン、製法がなされていないとなにもなりません。せっかくのゴアでも、安価なカジュアルブランドでもゴアテックスなどを使っているジャケットがありますが、テストサイトなどをみていますと、著しく透湿性能を損なっているジャケットなどがあります。なので、この素材をつかっているから、モノは確かだ!とはいえないんですね。

 

防水透湿素材に頼ってはいけない!

確かにこれらの素材は優れています。
しかし忘れてはいけないのが、これらの優れた素材をつかったレインウェアを、日本の夏山で使おうということなんです。
つまり、主に使う時期は6月7月の梅雨期をはじめとする時期です。
そして、頂上は寒くても、歩き出す登山口では気温30度を超える状態の中を歩くことも十分にありうる、ということです。
そこにあっては、素材がよくてももはやムレるのです。
シャツ1枚でも熱射病になる可能性があるのに、雨具を着るのはかなり体温を上げます。

 

夏山のレインウェアは薄い素材に限る!

そういう意味では、生地は薄くて軽い構造のレインウェアを選んでください。
いくら薄くても、防風性はありますので、秋季や稜線の風が強いときでも十分に防寒具として機能します。
それから、デザインが重要です。
ジャケットのポケットの中がメッシュになっていたら、通気性がでますし、最近は脇の下にもファスナーがついていて換気できるようになっています。
パンツ(ズボン)はどうでしょう?
たいていは裾にファスナーがついているですが、これも場合によっては換気になります。
ファイントラックからでているフォトンというレインパンツは、このファスナーがふとももあたりについていて、小雨程度のときなどは十分にあけられますが、ムレが抜けてものすごく楽になります。

ストレッチ性は必要か!?

ここ数年の特色として、レインウェアのようなハードシェルに、伸び縮みするストレッチ性のある素材がでてきたことです。
このストレッチ素材ですが、レインウェアに関しては、断然あったほうが快適です。
とくにレインパンツは、ズボンやタイツの上から履きますので、登山中の足上げがかなり快適です。
ただし、ストレッチするということはゴム素材のようなものがまざっていますので、数年立ちますとテンションがかかる部分を中心に劣化がみられるかもしれません。そのへんをメーカーがどう補っているのかなどわかりませんが、私は以前つかっていたストレッチ素材は2年ほどで劣化し、現在別のストレッチレインでは2年以上してもあまり劣化がみられません。

 

サイズは少し大きめで

レインウェアのサイズは少し大きめがおすすめです。
雨具はなにも雨が降っているときだけでなく、とくにアルプスの夏山では、風対策や防寒着として使います。
なので重ね着できる余裕があったほうが良いと思います。
また、パンツにおいては、裾が短いとシューズに雫が入ってくることもあるので、長めでよいでしょう。
いまは上下別々に売っていることも多いので、違うメーカーやデザインであわせるのもありだと思います。

 

選ぶのは結局気に入ったデザインで

あれやこれやと矛盾するような条件を出しましたが、登山用のレインウェアはほんとうにどこも優れていますので、上記の条件を考慮して、自分の理想が決まったら、あとはそれに合致した好みのデザインのレインウェアを選べばよいのではないでしょうか?
ぶっちゃけて言いますと、デザイン優先でも良いとも思います。
それくらい今のレインウェアの多くは質が高く、メーカー同士の差は僅差を争っているといっても良いでしょう。
あとは値段によるグレードくらい!?

 

紹介しているパタゴニアのレインウェアの記事はこちら