登山の標準装備としても、山でなくてもアウトドアでは必須のファーストエイド。
万一怪我や負傷したときのエマージェンシーの最低限の装備として携行したいものですが、よくよく確認してみると、なんとも中身がお粗末なファーストエイドキットを持っている方が多いように思います。そこで、世のため、アウトドアのため、登山者のため、私のファーストエイドキットの中身を紹介したいと思います。
ファーストエイドを紹介する前に、まずファーストエイドの重要性を再確認してほしいと思います。
事故にあったことはなくても、軽い怪我や負傷をした(見た)経験は誰しもあると思います。
その時に痛感することがあるでしょう!?
そうです、
一瞬、何をしていいのかわからなくなる
ということです。
ここでファーストエイドキットの中身を知ってほしいのは、
実は、持っていく物をそろえることだけではなく、
ファーストエイドキットの中身を再確認して、
持っているものをチェックし、
その使い方を熟知して、とっさのアクシデント時に行動すること
なのです。
いくら、スーパーファーストエイドキットを所持していても、使い方がわからなければ意味がありませんから。
私はガイド協会というところで救急講習を受けていますが、それ以外に、カナダ生まれのファーストエイド講習会、ウィルダネスファーストエイドの講習を受けました。
まぁ、その結果は・・・・さておいて(笑
【ウィルダネスの講習会の様子の動画。私もインタビューに参加しています】
これらの経験をベースにして、日本の山でとっさの時に役に立つファーストエイドをご紹介します。
私の場合、仕事で使うために、やはり慎重に持っていく物を選んでいます。
しかし、あまりに慎重になりすぎると、ファーストエイドキット自体が重くなりますので、向かう山や登山のスタイルによって大きいものと小さいものと2セットを使っています。
一般のみなさんはそのような必要が無いと思いますが、いろいろと装備を厳選してみてください。
これはベースですね。
タイプとしては、ジッパー式で開いたら、観音開きのような構造になっているものが主流です。
これにも理由があって、地べたやザックの上でぱっと開いて中身が全部見えるということが時短の意味でも重要になります。
市販のもので結構ですが、どのくらいの量を持っていくのかを吟味して選ばないと間違えます。
いきなり救急とは関係ないアイテムですが、これが重要です。
ファーストエイドのパックは一応防水生地などが採用されているものが前提です。なぜならば、事故は悪天におきやすいからです。
なので、中身も小分けしてジップロックに入れておくことをおすすめします。
そして、数枚、新しいジップロックをいれておきましょう。
水入れ・洗浄・氷のう・防水・密封…いろんな役にたちます。
これは2枚以上欲しいところです。
薬局で売っていますし、自分で布を買ってきてつくってもOK。
止血圧迫のほか、固定や腕の吊り下げなど用途の幅は広いです。
腕の吊り下げ方や止血・固定の結び方など知っておいたほうがいいでしょう
ファーストエイドの講習を受けるまでは必要ないかなと思っていました。でもやっぱり必要。
小さなハサミでも無いよりマシですが、刃が曲がって切りやすく、先が丸まったものがベスト。
用途は、テープカットだけでなく、硬い衣服(タイツなど)を切ったりする必要があるので、皮膚を傷つけないように刃先がとがっていないもので、軸から折れ曲がっていて、さらに軽量化したものがオススメ。
軸から刃先の長さが短いのは、テコの原理で力がなくても良く切れるため。
なお、この刃の長さが6cmを超えるものは、国内線でも手荷物に引っかかるのでご注意を!
医療用はさみ
これは必携です。非伸縮ですよ。
私はガーゼなどを固定するテープをテーピングやキネシオテープで共用しています。
テーピングは捻挫や骨折の固定だけでなく、靴底のリペアなど用途幅が広いので、ファーストエイドに収納せずに、すぐ取り出せる小物入れのほうにいれておきます。
厚みは50mmが使いやすいとおもいます。
指用には、これを縦に裂いて使えば問題ないでしょう。メーカーにより多少の差があります。
テーピングで皮膚が負けたり粘着力が強すぎると感じる方は、ニトリートのテーピングをおすすめします。
若干粘着力が弱めで剥がしやすい上に固定力もあります。
伸縮性のあるテープです。
私は膝や腰の予防に常用していますが、いざという時にも便利です。
50mm-70mmくらいものもがいいと思います。
ただし、1本持っていくとかなりかさばりますので、小分けして巻いて持っておいたほうがいいでしょう。
傷用のガーゼ、消毒用コットン、滅菌精製水コットンなど、1回分を小口分けした製品が出回っていますのでこれを利用します。
消毒薬(アルコール)は傷に直接つけてはなりません。キズはあくまできれいな水で洗い流して、傷口回りだけ消毒、です。
マキロンとか、スプレー式の傷に振り掛けるものはかさばる上に上等の手段とはおもえません。
ブログ記事にも掲載しましたが、傷口を消毒し、ガーゼで覆う処置はあまり有効ではないようです。ただし、野外では水が豊富にないことも多く、ガーゼなどをふき取りなどに使うことも考慮して、使い捨てを数枚用意します。精製水コットンは良いです。
しかし、消毒アルコールに関しては、ほとんど必要ないということが分かってきました。使って、ピンセットや安全ピンなどの消毒くらいだと思います。
バンドエイドのことカットバンって言いませんか?
従来の通気性のバンドエイドは一時的な保護にはなっても傷の治療にあまり役に立たないようです。
できれば防水タイプのものが下山まで使えて安心です。
傷ば傷口のタイプにもよりますが、とにかく汚れを洗ってから貼りましょう
今まではこういったカットされたバンドエイドだけを持ち歩いていましたが、現在は違います。
ハイドロコロイドフィルム、サージカルフィルム、防水フィルムというフリーカットのフィルムテープが超おすすめ!
これは何かというと、極薄の防水フィルムで、透湿性を持っているというフィルムです(写真左)。
キズをしっかりと洗って、フィルムを張れば、数日持ちます(※傷には毎日貼り変えしたほうがいいです)。濡れても大丈夫ですし。空気を触れさせないことにより自己治癒能力を高めますまさにアウトドアでも使えるアイテムです。ロールでカットできるものと、傷あてパッド付きのものとあります。
また、ハイドロコロイドは、傷口に直接当てます(写真中)。シール状になっていますが、体液によりブヨブヨになってまったくくっつきませんので、傷口を痛めませんし、カサブタになりません。
サージカルフィルム
ハイドロコロイドシート
キズパワーパッド(ハイドロコロイド絆創膏)
詳しくはブログ記事
に掲載していますのでご覧ください
出血がある場合、感染症などの予防のために、1-2セット用意しておきます。
医療用のものがベストですが、安価な介護用や料理用の衛星手袋でOKだと思っています。
ただし、尖ったものには弱く破れますので注意
これらの薬を飲むときは、注意しなければなりません。
まず、痛みを止めるということは、症状がわかりにくくなる、という点もあります。
解熱剤は眠気がでるものが多いですから、それをよく確認して、飲むタイミングなどを考慮してください。
おばちゃんにありがちな、飲め飲め作戦は要注意(笑
他人に飲ませる場合は安易な処置は禁物です。
これも、何かと便利。山でお腹の調子が悪いという経験は意外に多いかもしれません。
正露丸に加えて、御嶽百草丸や大峰陀羅尼助丸などもオススメ(効きます!)
近くのエリアにいったら買ってみてください
骨折や外傷のときに使います。使うときは、2本以上欲しいところなのですが1本でもないよりはマシです。
伸縮性のある包帯や粘着力があって留め具が要らないものなどいろいろ出ています。
私は、メインFAキットには2本、軽量化キットには1本いれています
※最近は粘着性のある伸縮包帯テープというのがあり、これが山では便利です!包帯巻きの手間が省け時間短縮になりますし、用途の幅も広がります。
粗品で結構です。新しいものを一ついれておきます。
何かと使えますが、圧迫止血などで重宝します。
夏井Dr提案による海草のコンブから抽出したアルギン酸塩を不織布にしたヘモスタパッドというのがあります。ズイコウパッドはそれと同じ素材で、強力な止血作用があります。外傷などで圧迫止血が必要な場合に有効です。タオルなどよりもより良いでしょう。
傷病者がけっこう重症だったりすると、症状などを細かく記載するためのメモ用紙があれば、ファーストエイドの手順を忘れていても、コレを見れば何をすればいいのかわかります。
ウィルダネスファーストエイドで学んだものを、自分なりに超シンプル化してみました。
参考になるかわかりませんが、このような感じです。
FA手順のほうは、まず事故発生に伴うステップを@〜Hに沿って判断し、緊急を要するのか、緊急を要しないのかを判断してファーストエイドに入ります。
右の用紙に大まかな状態・状況などを書き込んでおけば、下山後や救助が来たときに、状態説明をスムーズに移行できます。
(内容については、とうていWEBページ上では説明できませんので割愛)
自分なりに、あらかじめ処置を想定して作っておくのがよいでしょう。
これらのアイテムがあるとさらに安心です。人数が多いときや長い縦走のときなどは共同装備として持っていったほうがいいでしょう
これに水を入れて押し出せば、深い傷の洗浄に使えます。
液体の量を測れます。
先端を輪切りにすれば、ポイズンリムーバーとしても使えるはずです。
これはもう、携行している方も多いと思います。
足がつった時のおたすけ薬です。なぜか速攻で効き目がありますが、多用していると効かなくなってきます。
本来縫合後の固定に使われますが、深い切り傷などを抑える時に役に立ちます。
長細いシート状になっているものを切って使っていきます。
軽いし邪魔になりませんので、一つ用意しておくといいでしょう。
傷口の処置には、注射器などで水圧をかけて洗浄してください
衛生面で何かと使えます。
また、トゲが刺さったときなども重宝します。
なので、安いピンセットではなく、少々高くても、先端の精度の高いものを選びましょう
使い捨ての目薬があれば、誰にでも使えます。目に異物が入ったときの洗浄用に!
お願いだから、山でエアーサロンパスだけはヤメテクダサイ!
あれを小屋の中でばら撒かれると、ニオイがきつくてしょうがないです。湿布は薄くて軽いものか、塗るタイプでもいいのではないでしょうか?水が貴重なアウトドアでは、ゲルやクリーム状のものよりも、手を洗わなくていい液状のタイプがいいかも。
これは初心者向けにおすすめ!結構役に立ちます。
骨折箇所(手か足限定)に通して空気を入れて膨らませて、固定するというシロモノです。
超簡単であっという間に固定できてしまいます。
ただし、固定箇所が限定的なのと、開放骨折などの外傷がある場合は使えません。
あくまでも予備的な存在で
骨折時の固定としてシーネ(添木)が基本ですが、写真のような医療用グラスファイバー製のギブスを使うと最適であるということをガイド協会の講習で学びました。
このグラスファイバーギブスは、ロール状になっていて、それを包帯のように巻いて固定させるものですが、ファーストエイドでは、巻かずに板状の形を作って固定します。
水に濡らして7分ほどでガチガチに固まるのですが、まさに本物ギブスです。
サムスプリントなどのシーネをはるかに上回る固定力で、しかも処置が早いです。
やり方があるのですが、そのうち紹介したいと思います。
医療用シーネ、デルタライトプラス。3番がベター
(使い方追記)
デルタライトを縦長(40×15cm)に3層ほどに重ねて水に濡らし、乾いたタオルを挟んで腕(今回手首の骨折)にあてがい、包帯でグルグルに巻いていきます。
※シーネを直接巻くと、血行を圧迫する可能性があり、医療行為となるため、巻かないようにきをつけること。あくまでも応急処置です。
使うタイミングがなかなかありませんが、安全ピンはトゲ抜きや三角巾・衣服などの固定など使い方いろいろです。
カミソリは傷口処置の際、除毛したりするときに使います。T型じゃないほうがいいいかも。
ファーストエイドもあればあるほど良いかというと、軽量化という点では真逆で、どのラインで絞るかというのは各自あるかと思います。
一応参考まででした。